神聖ルーン・タロット占術
画:安久津和巳 監修:鏡リュウジ
発行:Gakken 2003年11月20日第3刷 ISBN4-05-401151-9
このデッキは、「タロット」という言葉を「カードによる占い」という意味で用いており、主役はルーン文字です。ルーン文字とは、北欧神話に登場する主神オーディンがもたらした叡知とされ、文字1つ1つに意味があります。その意味を用いる占いもあり、その多くは文字を刻んだ小石やコインを投げたり選んだりするようです。そのため正逆はありませんが、このデッキはカードにすることで一部の文字に正位置と逆位置で異なる意味を与えています。
このカードは、「ユル」と読み、「イチイの木」を象徴としています。文字の形は上下をひっくり返しても同じなので、逆位置はありません。が、意味は結構凄いです。
イチイの木は常緑樹で、北欧の厳しい寒さに耐える、力強い樹木です。その力強さは、「耐え忍ぶ」ことと「対立に勝利する」ことに影響すると考えられるのだそうです。つまり、いかなるピンチに見舞われても復活できる生命力の恩恵に与ることができる反面、堅い木材でもあるので武器に加工して他者の命を奪う武器にもなるという、両極端の意味を持つわけです。この特徴的な意味は、タロットの「死」や「死神」に酷似しています。文字の順番が13番目であるのが、さらに何らかの因縁めいたものを連想させてくれます。
蛇足ですが、個人的な感想を少し述べます。
北欧神話の概要を読んだ時、いかに寒さが畏怖されているかを知りました。そのため、このデッキに「死」を意味するカード(文字)があるとしたら、「氷」とか「雹」などだろうと考えていました。しかし、上述のとおり、「イチイの木」です。初見では「何故?」と戸惑いましたが、改めて解説文を読んだら納得しました。伝統的なタロットにも言えることですが、「死」は人が肉体を脱いで魂なり気の塊なりになる現象を示すのであって、「死を経て行く場所か状態」と呼ぶべき冥府や黄泉の国を示すものではないのです。北欧神話では、世界が氷に閉ざされたら万物が死滅した国になるとあります。そして、上述にもあるように、イチイの木などで作られた武器こそ死をもたらすものとしています。伝統的なタロットには、死をもたらすものの象徴として「死神」が描かれ、その次のカードから魂が直接影響を受ける世界観が描かれています。ここに両者の違いがあると知ってから、様々な神話や伝説、昔話を物語として楽しむ際に、その奥にあるかもしれない先人の思いや価値観を想像するという楽しみ方もできるようになりました。
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